マニアックフィンランド紀行(1日目)

当地の休み(誕生間もないキリストに東方三博士が会いに来た日だそうな)を利用してフィンランドに行ってきました。時間節約のために、水曜日の遅いフライトでヘルシンキに飛んだんですが、驚いたのは、市中心部に着いたのが夜中の2時頃だったのに、結構人通りがあるんですね。遅いだけでなく、それなりの積雪があるんですが、若者を中心にかなりの人が歩いている。さすが休日前と言うところでしょうか。ホテルに投宿後、しばし就寝。
翌日の朝食には北欧らしくニシンなどの魚の他、カレリアパイという、ミルクで炊いた米を巻き込んだ手のひらサイズのパイが。それにしても、およそ米なんかとれそうもないフィンランドでこれが代表的な郷土料理の一つになっているのはよくわかりません。
市内観光の最初は テンペリアウキオという石造り教会。というか、小さな岩山(岩丘?)をくりぬいて教会にしているんですね。まあ、印象としては教会と言うよりもモダンなコンサートホールと言うところですが。ちょうど、明日からしばらく工事で閉鎖の予定らしく、ラッキーでした。それにしても、町中にこんな施設があるのがちょっと驚きです。
そこから、雪の中、オペラハウスやコンサートホール(フィンランディアホール)などを見に行く。湖沿いの道を歩いたんですが、その先にはオリンピック会場がありました。ヘルシンキオリンピックは東京の前の前、1956年に行われていますが、さすがにそのころの時代を反映して、小ぢんまりした印象でした。しかし、このオリンピック、フィンランド人の努力の結晶だったようです。というのも、フィンランドは一応枢軸側だった(但し、末期に独自に講和交渉を行おうとしてドイツ軍に国の北部をひどく破壊されたそうですが)ため、戦後にソ連から膨大な賠償金を課されたんですね。それをきっちり払い切り、さらにオリンピックまで開催したんですからなかなか大したものです。
その後、国立博物館に。教会を思わせる塔と重厚な造りの建物でしたが、いくつか発見が。まず、勲章のコーナーではナチスからのものが堂々と展示されていました。ドイツでは少なくとも着用は法律で禁止されているそうですが、何かあまり気にする風ではなかったですね。また、世界の貨幣のコレクションではちゃんと日本の大判があったりしました。さらに、大きなクリスマスツリーがあったんですが、そこに飾られていた国旗の分布がなかなか面白い。ヨーロッパの国はいろいろあったんですが、それ以外の地区のものは、星条旗とカナダ国旗と日の丸だけだったんですね。何だかフィンランド人の世界観がしのばれるようです。日本が入っていたのは非常に嬉かったですが。
まあ、今のフィンランド人全般がそうなのかはわかりませんが、伝統的に対日感情は良いようです。一番の契機は日露戦争でにっくきロシアを破ったと言うことですが、由来は分かりませんが、同国最大の製菓メーカーの代表的な製品が「GEISHA」チョコレートなんですね。ヘルシンキ空港にも山積みで売っていました。たまたま食する機会がありましたが、なかなか上品な味わいでしたよ。
それにしても、ヘルシンキは清潔な町です。19世紀になって、ロシアの意向でロシア寄りに遷都させられて出来た町のようですが、ガイドブックには「ロシア的」な町とありました。確かに、東欧一般に見られるようねドイツ風の高い塔などは見かけませんでした。で、ロシア風の建物と近現代の建物のミックス、さらに積雪というわけで、非常に清潔な印象です。
清潔さの一端は、アジア・アフリカ系の移民をほとんど見かけないせいもあるかもしれません。というのは、どうしてもそのような人々は自分たちのコミュニティを作りがちですし、そうした地区は経済的な理由からも治安が悪くなりがちです。数年前に行ったオスロとかストックホルムなんかはそんな印象が強くありました。しかし、ヘルシンキではごみ収集のようなダーティーワークをフィンランド人自身がやっているように見受けられ、また、移民もほとんど見かけませんでした。それだけ経済規模が小さいと言うことかもしれません。
といいながら、その日の昼食はタイ料理。小さな店ですがお客さんは一杯で、上品そうな年配のウエイターが差配していました。
ところで、人と言えば、ヘルシンキでははっとするような美人が結構歩いていてびっくりするんですが、その人たちがしばしばロシア語をしゃべっていたりする。注意してみると、ロシア人の観光客が非常に多いんですね。確かにサンクト・ペテルブルクからでも鉄道で簡単に来れてしまいますから一番手ごろな観光目的地なんでしょう。で、フィンランド人はと言うと、ややぽっちゃり系の、ちょっと垢抜けない感じの女性が多かったように思います。そもそもフィンランド人はフィン・マジャール系ということでアジア系とされていますので、コーカソイド以外の血が混じっているんでしょう。
その後、市の西側に歩いて行き、まずヘルシンキ大聖堂を見学。大きいですがプロテスタントかつ歴史が浅い町らしく、内部の装飾はごくあっさり。何よりも教会が本当に真っ白で、これが積雪の町と曇り空を背景としている様は何とも言えません。寺院ではもう一つ、ロシア正教会ウスペンスキー寺院があるんですが、祝日のためか閉まっており、明日に持ち越し。
そこから、東にとって返し、国立美術館であるアルテウムを見学。大体、初めての国では美術館に行って、その国の画家の絵を見るのが習慣になっています。というのは、何となく国民性が分かるような気がするからなんです。で、この美術館ではフィンランド人画家の絵のうまさに驚倒しました。才気と言う面ではよくわかりませんが、とにかく見ていて安心できる。テクニックと感性のバランスが良いと言うか、オーソドックスな意味でレベルが非常に高いと感じました。
実は、入国以来、デザイン的な洗練度の高さを感じていました。知り合いのカーデザイナーに言わせると、デザイナーは結局のところ絵描きであって、絵のうまさとの相関が非常に高いのだとか。今回、非常に納得させられましたね。
夕食はホテル近くのレストランに。ここでトナカイ肉のステーキに挑戦してみましたが、食感は豚肉でしたが強烈なレバーのような臭いがあって、常食するものではありませんでした。ここは内装のデザインが凝っていて、店の中にトラクターがあったり、わざと雑然とした雰囲気を出していました。