強制収容所というもの(その3)

脈絡無く書いていますが、まあお付き合いのほどを。

以下補遺のようなものですが。

マイダネク収容所はポーランド東部にあり、ナチスが証拠隠滅をする暇なく接収できたことで、非常に保存状態がいい、つまり犯罪性がわかりやすい収容所として知られています。いや、実際、各地の収容所って、本当に破壊されているようでして。トレブリンカとか、ベルゲン・ベルゼンといった著名な収容所も、破壊され尽くしているとか。その中で、マイダネクは、宿舎だけでなくガス室や人間の焼却炉などが残っており、ある意味、アウシュビッツよりも衝撃的のような気がしました(アウシュビッツでは、ガス室はダイナマイトで爆破されており、そのひしゃげた形自体が保存されている)。

でもねぇ。筆者にとって、より心に突き刺さったのは、囚人が作ったという「芸術作品」でした。一つは、亀の彫刻。ガラパゴスのゾウガメくらいの大きさの、石の彫刻なんですが、「ゆっくり働け」というメッセージなんだとか。もちろん、作者は知られておらず、多分死亡したらしい。でも、非常に完成度が高く、人間の表現に対する意思の強烈さを感じずにはいられません。また、ちょっと稚拙ですが、城のテラコッタも残っています。考えてみると、ラスコーだったかアルタミラの壁画に、自分の手形を残した「画家」がいるそうですね。自分の生の痕跡を残すことの意味を感じさせます。

話は変わって。今、強制収容所に行くと、大概は基礎のみで、建物が残っていないことが多いです。アウシュビッツなんかも、レンガ造りの建物はかなりありますが、木造はほとんど残っていない。これって、ナチスの破壊もありますが、かなりの部分は戦後、周辺住民が持っていってしまったとか。そりゃそうですよね。大戦で、住民生活はめちゃめちゃにされている中で、放置されている住宅があれば、材料やたきぎとして使うでしょう。しかし、そうした窮乏の中で、ひたすら虐殺あるいは強制労働のためにエネルギーをかける、いわば暗い情熱のようなものを考えると、暗澹とならざるを得ませんね。

こうして書いていると、自分が見たものの、ほんの少ししか伝えられないことにもどかしさを感じます。でも、どう書いていいか判らないんですよ。

どうも、まだまだ書いてしまいそうな気がします。