アメリカにおける「労組」というもの

デトロイト3の救済策というかつなぎの支援が決まりましたが、UAW(全米自動車労組)は今回のつなぎ支援の条件に待遇の見直し(日系などとどう待遇にする)が条件になっていることに激しく反発しているようです。一方、これ以上のサポートについてはアメリカ国民の7割が反対だとか。
これについては、いろいろな解釈があり、アメリカ人はデトロイト3の車なしでもやっていけるとか、経営者の法外なサラリーへの反発だとか言われていますが、筆者の考えでは、UAWへの反発、あるいは今回の事態そのものがUAWの敗北というか断末魔を意味するんじゃないかと思っています。

そもそも、アメリカにおける労組って、いろいろあるでしょうが、本質的に「労使交渉代理業」なんですよ。いや、ルーツは労働者の代表だったのかもしれませんが、現在ではそうした企業体と見たほうが事態の本当のところを捉えられるように思います。
彼らはさかんに企業の労働者をオルグしますが、その目的は要するに自分たちへの上納金を増やそうとすることに他なりません。企業が売り上げを伸ばそうとするのと何ら変わらないわけです。そのため、労働者への説明も甘言を弄することしばしばであり、まったく油断がなりません。

また、組織化が成功した後はUAWの利害が優先され、労働者の利益を必ずしも代表するとは限りません。今回の待遇見直しだって、労働者自体の本音がどこにあるかは分からないと思っています。案外、雇用が守られるのなら多少の切り下げは許容するのではと考えますが、そうなると代理人としてのUAWの存在意義がなくなってしまうので、彼らは反発せざるを得ないんですね。つくづく、アメリカの労組って業が深いですよ。一般のアメリカ人が支援策に乗り気でないのは、そうした部分もよく分かっているからだと思います。

逆に、これを機に、UAWが柔軟性を高めたりしたら、それこそ歴史的なことでしてね。アメリカ、というかデトロイトが、多少粗放でしょうが、ものづくり本位に回帰する契機になりえますね。しかし、簡単な話じゃないでしょうなぁ。