アメリカにおける軍隊の影響力

アメリカネタが続きますが。

アメリカに限らず、海外に住んでいると軍隊と一般社会との接点の多さを感じますね。ヨーロッパでも、国の差はあれ、兵隊や基地をよく目にします。特に大陸では、国同士が国境を接しているわけで、逆に国民の安心材料になっているのかも知れません。
早い話、ヨーロッパの王室では、国王は大体軍服を着て写真に納まっています。女王の場合はさすがにそうではないようですが。また、宮殿に行けば、壁にかけてある絵は大抵戦いの絵です。そもそも、ヨーロッパの貴族のルーツは、10世紀くらいの、ヴァイキングの襲来から民衆を守った勢力(それまでの領主のうち非力なものは淘汰された)ですので、軍事はかれらの家業みたいなもんですね。また、宮殿観光のハイライトは判で押したように衛兵交代です。国王のいない、例えばチェコなんかでも立派に衛兵交代をやっています。まあ、チェコの場合は緊張感がないというか、衛兵のお母さんらしき人が応援に来ていて当人が恥ずかしそうにしていたり、監視所でも微動だにしていたり(筆者の息子の観察による)して、かえって親しみが持てましたがね。

しかし、アメリカの場合、その影響力はまた格別なものがあるように思えます。何しろ、結構戦争してますしね。兵隊、というか外征にいくことがありふれた事態でもあるんでしょう。航空ショーなんかでも、実にヒロイズムに訴える演出をしていますし、デイトンの空軍博物館なんか、一つの建屋の中にB52とかB29とか、一杯並んでいて、そんな建屋がいくつもあって、しかも無料ときている。膨大な広報予算を持っていますね。そうやって、軍隊に対する距離を常に縮めようとしているように感じます。

日本人の駐在員でも、アメリカで子供が生まれると当座、日本とアメリカの二重国籍を持つことになります。で、成人するときにどちらかを選択するんですが、その時に必ず言われるのが、「アメリカを選ぶと徴兵されるかも」ということでした。実際には、今は志願制ですが、いつ何時徴兵制に変わるかもしれないと思わせる部分は確かにありますね。

ところで、旧聞になりますが、マケインが負けた原因の一つは、副大統領にペイリンを選んだことだと言われているようですが、筆者なりの解釈では、彼女が軍司令官としての重みに欠けていたことがあるのではと思うんですね。ホッケーママとしての出自は親しみを持たせるには良かったかもしれませんが、戦争に行けと命令する司令官としての資格があったかについては大いに疑問があります。ちょっと軽すぎましたね。マケインも、自分自身がベトナム戦争の英雄だった割には配慮が欠けていたように思います。まして、彼の年齢からすると副大統領の重みがより大きかったわけですから。

ひるがえって、我が日本ですが、自衛隊の存在感は災害救助や札幌雪祭りなど、決して無いわけではありませんが、凄みは感じませんね。実際は相当な実力があるようですが。この間、かんべえ先生が書いていたところでは、自衛隊には営倉も軍法会議も無く、脱走に対しての罰則は罰金30万円だそうな。これでは軍隊とは言えないというのが氏の論旨でしたが、実際、前線で怖くなった兵士が携行していた現金30万円を撒き散らして逃げる図というのもしまらない話です。まあ、そんなこともないでしょうが。

例の田母神事件にしても、そうした、ある種の危機感の、変な形での発露なのかもしれません。