草食系はいつ終焉するか

最近の消費動向が「草食系」などと呼ばれることがありますね。ぎらぎらした欲望でなく、つつましい消費。
例えば、家や車を所有するのではなく、タイムシェアや貸家を利用する。海外旅行に行く人もずいぶん減っているようです。特に若者が。焼酎や発泡酒で済ますなんていうのもそうでしょうね。

海外旅行指向の減退については、若者の好奇心の衰えを嘆く識者も多いようですが、全般的に言って理由はいくつかあるのではと思います。
まず、経済的な理由でしょうね。格差などと言われていますから、金をかけられない層が目立っている部分があるかとは思います。また、携帯を始めとした通信費が家系を圧迫して他に消費が回らないこともあるでしょう。
もう一つは、経済合理性の面です。カーシェアリングとか借り家指向なんかは、「所有」そのものに価値を見出さないとしたら、非常に合理的な選択ですね。何しろ都会地で車を所有するコストと使用頻度を考えると、レンタカーやカーシェアリングにした方がグレードの高い車を使える可能性が大いにありますし。
また、意識として、エコに向いている面もあろうかと思います。量的な消費に対する罪悪感ですね。
供給側の責任も考えられます。ネットでも、自動車会社が前ほど魅力的な製品を提供できていないという意見を散見します。確かに、日本国内に限って言えば、商品が多すぎて、一つ一つのモデルのオーラが無いような感じがするのも事実ですね。
それから、身の回りへの注目も理由として考えられます。前にも書きましたが、ヨーロッパにいて思うのは、日本の自然と食べ物のすばらしさですね。ですから、何も海外に行かなくてもという気持ちもまんざら分からないでもないです。

でもねえ、経験って人生を豊かにしますよ。京都あたりのグルメは美食の限りを尽くしたあと高野豆腐とか枝豆とかに戻ってくるという話を読んだことがありますが、もちろん最初からじゃありません。程度の差はあれ、美食の経験があって初めて普通の食材のおいしさに目覚めるわけですね。旅行から帰って、我が家のありがたさを実感するがごとくでしょう。
また、やはり世界は広いです。自分にとって、グランドキャニオンの奥にあるキャニオンランズとモニュメントバレーを見たことは生涯の思い出ですね。

まあ、人間、煩悩というか欲望がその本質でもありますので、そのうちに回復してくるのではと思います。やはり、発泡酒よりエビスの方が数段うまいですし、焼酎も悪くないですが清酒は世界の宝だと思いますよ。
願わくば、同じ素材をより深く味わう傾向だけは続いてほしいですね、より少ない資源でより大きな喜び。こうなれば、草食系なんて言わせないよ、と心底思います。ことに、食材の場合、命をいただいているわけですしね。