人とスペースー希少度の違い

ヨーロッパにいますと、いやでも土地の広さを感じます。スイスや北欧はともかく、一般的には平地が多いですよ。例えば、国の名前自体が「平地」という意味のポーランドなんか、面積は日本の8割ですが日本の平地率が2割とすると平地だけでは日本の4倍あることになる。で、人口は日本の3分の1ですから、国土の全部が平地でないとしても、一人当たりの平地が10倍はあることにありますね。まあ、アメリカなんかはその比ではないんですが、アメリカの場合は原野が多いので、人里という意味ではヨーロッパの広々さはやはり印象的です。
 中央公論社版「世界の歴史」の月報の対談で、なぜヨーロッパの騎士が完全武装なのかというテーマがありましたが、ヨーロッパ史の側からは、要するに人間が貴重なので死なれては困るということでした。やはり、ヨーロッパは痩せ地なんでしょう。前にも書きましたが、中世ヨーロッパでは小麦一粒蒔いて、2粒からせいぜい5粒の収穫だったそうですから、まあ慢性飢餓状態ですね。本当の意味で飢餓から脱したのは、新大陸からのジャガイモの導入以降だと思います。それに対して、日本はこの面積にしては異常な人口集積で、米作を中心とした穀物生産の単位面積当たりの効率が世界的に見ても大変高かった。ですから、防御があまり発達しなかったとか。一方、戦国時代の戦い方は、専ら遠攻、つまり弓とか長槍とかつぶて(投石)中心だったようですから、やはり異民族ではない者同士の戦いだったともいえるかもしれません。
 何だか、議論がまとまりませんが、要するに近代以前のヨーロッパを先進地帯として見ると、とんでもない間違いをするということなんです。人と人の距離感もそのような感じがしますね。