円高の効用

日本の製造業の惨憺たる決算発表が続いていますが、その一つの理由が「円高」であるはずです。今は、急激な売り上げの減少が主因となっていますが、来期収益には確実に利いてくることでしょう。

しかし、本来自国通貨の価値の上昇こそ、国民の目的であるはずです。昭和天皇が、急速な円高で国民が苦しんでいるという報告を受けたとき、「それはいいことではないか」とおっしゃったそうですが、まことにその通りで。

本来は、汗水たらして自国の通貨の価値を上げ、今度は優雅に他国の成果を買う、というのが本来の目的であるはずです。しかし、日本って、どこまでも「汗水たらして」から脱することができないんですね。
理想的に言えば、製造業を含む全産業が高度化していくべきであって、例えばカローラで稼いでいたのを、レクサスに切り替え、高くても売れるような構造に変えていく、ついていけない産業は他国に譲るということになります。
そのためには、やはり日本ブランドの価値を高めるしかないんでしょう。

例えば、こうした円高下でも観光客を呼べるだけのブランド力とか、高くて売れる製品力です。最近の日本の農産物はそういう方向を目指しているようで、なによりです。

製造業も、量的な拡大よりも、質の向上を一層図るべきなんです。戦線を整理し、製品のクオリティの向上という原点に戻る。何しろ、少子化なんですから、質で食っていくしかないんですよ。

もう一つは、最近、雪斎どのも書いておられるように、企業の買収でしょうね。今のうちです。

未だに日本の経営って、量的な拡大を目指してばかりいますが、これからはいかに少ない労力で多くの価値を得られるかという、一種のコストパフォーマンスの観点がますます重要になってくると考えます。