測量と言うもの

突然、測量と思われるかもしれませんが、筆者、測量士補の資格を持っていまして。一時期、測量を業の一つとする会社に出向していた際に、興味を覚えて勉強してみた結果と言うわけです。一般の方は、測量というと望遠鏡のような装置と赤白の棒を持った作業者のイメージかと思います。筆者もそうでした。しかし、実際は非常に奥が深いものなんです。

まず、測量の本質は、「誤差との戦い」と「曲面との戦い」じゃないかと思います。
誤差というのは、非常に微妙な観測をしているので、その中でいかに正確な値を出すか。例えば、機械にもクセがありますから、望遠鏡の表と裏を使うとか、あるいは、複数回の測定結果をどう総合するか、そういういろいろなノウハウを学ぶわけです。あの、赤白の棒の計測だって、朝なんか、地面から立ち上る水蒸気のゆらぎが影響するので、ある程度の時間になってから開始するようになっているんですよ。
また、曲面との戦いというのは、もちろん、曲面である地表面を二次元である地図にするわけですから、どうしても近似的な手法を使わざるをえない。それでも、狭い地域であれば曲面であることはある程度捨象できますが、それでも、ちょっと長めの距離の計測になるとすぐに地表の曲面性を考慮せざるを得なくなります。また、地表ではなく、航空写真なんかでの作図では、真下の画像は真上から見た通りになりますが、真下から遠ざかるに従って、高いビルなんかが寝てきますね(側面から見る感じになる)。これを修正する画像処理技術(オルソと呼ばれています)なんかも発達しつつあります。まして、地球全体なんか、大変ですね。世界地図が用途別に作られているのは、万能地図ができないからです。
因みに、昔から、陸軍は地図で考え、海軍は地球儀で考えるなどと言われていますが、両軍人の文化というより、行動範囲の差がこのような結果になるんでしょう。

軍事の話が出てきましたが、勉強して実感するのは、この世界、軍事技術の影響の大きさです。というより、軍事技術そのものですね。参謀本部のルーツは、軍隊の地図部隊でしたし、今の国土地理院の前身は、旧陸軍測地部ですからね。地理技術の最先端のGPSだってそうですし。まあ、数学が弾道計算で発達したり、石版画が戦場での簡易のコピー技術として発明されたり、こういう例は枚挙に暇がないです。

まあ、いままで書いてきた「地図」は、大体はプロ向けの話です。しかし、我々一般人の知らないところで、いろいろな世界があり、それが我々の生活を支えているという一例ですね。