ドイツにおける戦災について

ドイツを旅するにあたって、心しなければならないのは、ひょっとしたら再建ではないかということです。
日本の場合、空襲を受けた都市は、大抵は全く新しい形に生まれ変わっていますね。
しかし、ドイツの場合、昔のとおりに再建するんですね。しかも、結構、瓦礫を利用しています。ですから、再建かどうかは外から見てすぐに分かりますね。昔の部材と新しい部材が混在していて、まだらになっているんです。で、内部はだいたいがまっさらです。全く新しい形に作り直すのもどうかと思いますが、昔どおりの再建も何か痛々しい感じがあります。
第二次大戦中、リヒャルト・シュトラウスが、「メタモルフォーゼン(変容)」という弦楽合奏曲を作っていますが、これはドイツの都市が爆撃で次々と破壊されていく悲しみをつづったものとされています。
戦災を受けなかった町の美しさをみるにつけ、破壊された都市の往時がいかばかりかを想像するにつけ、ヒトラーの罪悪を実感しますね。また、ドイツ人の喪失感を感じます。
また、空襲だけでなく、実際に戦場にもなっていますし、略奪も受けたはずです。
日本の場合、確かに破壊されはしましたが、すでに江戸から明治にかけて、町がすっかり変化していたわけで、戦災後も、その進歩の延長線上で町を再建していったように見え、悲壮感というものは相対的に少ないような感じがします。
どちらがいいというわけではありませんが、「再建」と一言で言っても、そのありようと意味合いは相当に違いますね。