ワーグナーと映画音楽

ドイツを旅しながら、ワーグナーの音楽をたっぷり聴いていました。ほんと、不思議なほどワーグナーがぴったりくるんですよ。

それにしても、現代音楽はワーグナーに源を発していると言われています。例えば、「トリスタンとイゾルデ」の、調性がはてしなく変化していく音楽が、後の無調音楽とか、十二音音楽なんかになっていったとされています。
しかし、それ以上に映画音楽なんかは、そのかなりの部分をワーグナーに負っているような気がします。それまでの音楽が、どうしてもリズムに乗っていたのに対し、場面場面でどんどん盛り上げを図ってきます。いわば、劇画調なんですね。

思うに、映画の発達期に音楽がそのような段階に達していたのはまことに幸運であったといえるでしょう。もしも、音楽が例えば、バロックのバッハとかモンテヴェルディの段階のままだったとしたら、随分滑稽なことになっていたでしょうね。ちょうど、のらくろの絵柄でゴルゴ13を描くようなものです。

もっとも、音楽がそのようなものであれば、観客もそんなものだと割り切るんでしょうが、映画とかテレビがここまで発達したかどうか、よく分かりません。

そうした意味では、当たり前であると思っているものを、ちょっと思考実験的にずらしてみると、なかなか面白い見方ができますね。