英語の使い方について

筆者、アメリカの現地法人に人事担当者として駐在の経験がありますが、結構日本人とアメリカ人の紛争の仲介に時間を取られました。でも、結構英語の誤った用法によるものがあったんです。

一例目:had better
日本人マネージャーから最後通告を受けたといってアメリカ人社員が泣きついてきました。マネージャーは、
You had better do・・・
と言ったというんです。最初、何のことかわかりませんでした。だって、明らかにマネージャーは親切心からアドバイスしていますから。でも、英語でのhad betterって、「これこれをしないと後どうなっても知らないぜ」という、非常に強いニュアンスらしいんですね。ですから、部下としては、それを達成しないとクビだと思ったわけです。あるいは、「ボスが怒っているから急いで行ったほうがいいよ」という場合にも使えるようですが、これとて、「そうした方が身のためだ」という切羽詰った状況を表わすようなんです。
日本の英語の教科書では普通に使われているhad betterですが、そんな意味だとはついぞ知りませんでした。

二例目:You should, You must
これも、アメリカ人が人事に駆け込んできた例ですが、ボスにYou shouldと言われたと、まるで人格を否定されたように訴えるんです。どうも、ネイティブの感覚では、小さい子供に「早くおもちゃを片付けなさい!」というような、相当な上から目線のようなんですね。少なくとも、社会人同士が使う言葉じゃないらしいです。

三例目:have to
これは社内ではないですが、空手教室で日本人の受講者が
When do I have to pay lesson fee?
と聞いたらしいんです。これをはたで聞いていた日本帰りのアメリカ人があわてて講師に釈明したそうです。実は、このhave to、「不本意だがいやいやする」という意味なんです。
これが、例えば夕食に誘われて、
Sorry, I have to complete my task till today.
と言って断われば、「本当は行きたいんだけど、残念ながらこの作業を完成させなくちゃいけないんで」という、遺憾の気持ちになります。しかし、受講者の例では、「本当は払いたくない」ということになってしまいます。

三例とも、日本の英語教育では教えてくれないですね。いや、むしろ、誤った用例を教えられているといってもいいでしょう。最近は知りませんが。

因みに筆者、和英辞典を使うときには慎重を期すようにしています。和英を引いてある言葉を候補とした後、必ず英和でその言葉の意味およびニュアンスを確認するようにしています。その結果、しばしば却下になりますね。日本語もあいまいな部分がありますので、和英・英和と引くと、とんでもない意味になっている場合があります。

日本の英語教育の担当者もまだまだ痛い目にあっていないんじゃないかと感じます。