ドレスデンにて

最近、忙しさにかまけてすっかり更新をさぼっていました。まあ、単身赴任も長くなり、またヨーロッパの冬はどうしても精神的に落ち込みがちになりますね。
で、週末を利用して、気分転換にドイツ東部の町ドレスデンに行ってきました。

ドレスデンはその昔はザクセン侯国の首都、今はザクセン州の州都で人口は50万ということですが、旧市街はエルベ川のほとりのごく小さなものです。ここに、宮殿や居城や教会、広場などがぎゅっと圧縮されていて、すべて徒歩で回れる、観光に非常に都合のいい町ではあります。
実は筆者、2年前にもちょっとだけ立ち寄ったんですが、今回はちゃんと一泊し、じっくりと見てみました。そhして、改めて思ったことが二つありました。

まず、ヨーロッパの絶対主義というもののある種の凄さです。ドレスデン城は今日では一種の宝物館になっているんですが、ここの収蔵物がなかなかのもので。宝石とか黄金というよりも、非常に緻密な工芸品がそれこそ膨大な数あふれかえっているんです。多いのは金銀細工や象牙細工なんですが、一つ一つの細工が手が込んでいて、いったいこれを作るのにどれくらいの工数(おっと、製造業的発想ですね)がかかったのか。しかも、その数からして、そこにつぎ込まれた国富を考えると気が遠くなります。
また、隣のツヴィンガー宮殿には美術館もあって、これも凄い。今回の訪問の一つの目的は、ジョルジョーネの「まどろみのヴィーナス」がここにあることを前回の訪問の後に知り、ぜひもう一度こなければと思ったことにありますが、そのほかにもラファエロとかレンブラントフェルメールの逸品が目白押しでした。
しかし、これが大きめとはいえ一侯国のものですからね。ドイツは三十年戦争で完全な小国分立状態になり、しかもその後に絶対主義時代が来たため、各国君主がミニ太陽王を気取ったということでしょうから、ドイツ全体の経済発展が著しくそがれたであろうことが容易に想像できます。まあ、当時の人々にとってはこれが常識だったんでしょうが、国に体制と言うものがいかに大切かを改めて感じます。

もう一つは、やはり第二次大戦のことです。ご存知の方も多いかと思いますが、ドレスデンは大戦末期に大空襲を受けて徹底的に破壊されています。犠牲者の数は数万人から十数万人と今でも不明のようですが、どうも他所からの避難民で溢れかえっていたため、さらに被害が大きくなったようです。中心にあるフラウェン教会は白亜の美しい教会ですが、やっと4年前に再建されたとのことで、その白さがかえって痛々しく感じられます。
しかし、ちょっと意外だったのは、宝物のあるドレスデン城にしても完全に瓦礫になったわけではないらしいんです。もちろん、外側に向いた部分はほとんど破壊されましたが、内陣側はそれなりに残ったとか。さすが、石造りの建物は頑強ですね。ちなみに、ドイツの空襲では爆弾中心だったのに比べ、日本への爆撃では焼夷弾が多かったのだとか。
そうはいっても、非常なダメージを受けたのは確かで、街頭に沢山建っている彫刻類は大体が黒焦げですね。また、再建された建物は黒白まだらのものが多い。瓦礫を再利用しているためです。中心の広場は今ではきれいに整備されていますが、一歩裏に回るといろいろな爪あとや昔の建物の基礎部分がむき出しになった大穴なんかがそこかしこにあります。そう思うと、広場の威容も何だか舞台の書割のようにも見えてしまいます。

ということで、改めていろいろ考えさせられる小旅行ではありました。