「聖おにいさん」と日本人の宗教意識

年末に日本に帰国した際に、静かなブームになっている漫画の「聖(セイント)おにいさん」を買って帰りましたが、これが期待にたがわず面白くて。
話は、ブッダとキリストが下界での休暇を楽しむために、立川でほとんどニートの生活を送るという、一話完結のコメディなんですが、例えばブッダが昼寝していると涅槃と間違えて鳥や動物が大勢集まってきたり、銭湯でうっかりお湯をぶどう酒に変えてしまって騒動になったりして、仏教やキリスト教の基礎知識があると本当に笑えます。しかも彼らの会話が現代日本の若者言葉で、身近なことおびただしい。
しかし、これってもしかすると日本人の特権じゃないでしょうか。というのは、大多数のヨーロッパ人はキリストの部分はわかっても仏教関連はちんぷんかんぷんでしょうし、仏教国ではその逆のことが言えるでしょう。また、欧米ではキリスト教を背景にしたジョークは一つのジャンルになってはいますが、宗教的な事柄に対して厳格な、例えば一部のイスラム教国などでは、出版するのも憚られるかもしれません。
そう考えると、改めて日本という国の特異性が浮き彫りになります。まず、いろいろな宗教に関する事柄が広く国民の一般常識になっている。と同時に、宗教について寛容で、各層がとりたてて目くじらを立てることが少ない。まあ、学習マンガでイスラム教の教祖ムハンマドの顔を描かないといった配慮がされているのをこの間見ましたが、これなんかも一種の常識化とみることもできるでしょう。
こうしたことがいいことかどうか、にわかには判断できませんが、少なくとも日本は宗教について情報量が多く、にもかかわらず気楽であるということは言えます。いや、もしかしたら、これって日本人の適応力につながっているかも知れませんし、宗教の共存と言う意味では、いろいろな可能性を感じますね、
ともあれ、「聖おにいさん」を読みながら、日本に生まれた幸せをかみしめています。