ロシアにおける文系と理系

本当に久しぶりのエントリーなんですが、言い訳せずさっと書いてしまいましょう。

最近、機会があってロシア(サンクトペテルブルク)に行ってきました。

昔からの知り合いにフルアテンドしてもらい、本当に助かりましたが、実は今、ネオナチの襲撃のリスクがあり、うっかり町を歩けないらしいんです。ですから、ドア・ツー・ドアでの移動ということになります。

ところで、いろいろな見どころを訪問してわかったんですが、今でも旧ロシア時代のアイドルはピョートルとエカチェリーナの両大帝です。

さて、実は、ロシア人、ロシアのことを全然信じていません。特にロシア製品のことを信じていない、というのがインテリの平均的な態度のようです。実際、おみやげにロシア製ビールを買おうとしたら、その知り合いに瓶入りを買うように勧められました。彼は缶ビールを日本に持っていこうとして溶接部分がはがれてえらい思いをしたそうなんです。

しかし、ロシア人はロシアについて強烈な民族意識を持っています。一つのキイワードは、「精神性」ではないかと思います。とりわけ、ロシア正教は、ローマ〜コンスタンチノープルを経て、モスクワを第三のローマと位置づけているようですし、町のど真ん中に大きな白亜の修道院を見たときには、彼らの民族意識の由来を見た気がしました。
もう一つは、理系的な「独創性」神話が挙げられます。実はロシアって歴史上、非常に理系的な貢献が大きい国でして、例えば現代幾何学の祖であるロバチェフスキーとか、周期律表のメンデレーエフとか、多段ロケット理論のツィオルコフスキーといった真に独創的な業績を上げた人々がいます。また、第二次大戦時のT-34戦車のような傑作兵器をいくつも世に出しています。現代でも、系統的理学研究の手法であるTRIZなんていう、知る人ぞ知る研究をものしています。
ですから、ロシア人としてはそうした精神性とイノベーション力についての強い自負があるために、安心して自国の消費財を罵倒できるということではないかと思います。

で、そうした文系的な帝王の右代表がエカチェリーナ、理系人間がピョートルと見なすことが可能ではないかと思います。

どこの博物館でもこの二人の業績が顕彰されているのを見ながら、漠然とそんなことを考えている。そんな旅でした。