どうでもいい「お」のはなし

当地では、時々半分ボランティア気分で、会社の通訳さんたちと日本語勉強会をやっていますが、毎回実感するのは、日本語のニュアンスの微妙さというか危険性です。
中でも難しいのは敬語であり、とりわけ、「お」の使い方は難物の一つです。「お」というのは、お風呂とかお酒とかの「お」のことです。お風呂とかお酒だとごく自然な「お」が、例えば「おビール」となると急に水商売っぽくなってしまう。
また、結構、皮肉な雰囲気もありますよね。「お高くとまって」とか「お安くないね」なんていうのが典型ですか。「お調子者」なんかもこの系譜と考えられそうです。
社会科の教科書には、「山梨県では桃の栽培が盛ん」とか「広島県では造船業が盛ん」なんていう表現がしょっちゅう出てきますが、これなんか、「お」をつけるとほとんどセクハラです。
ちなみに、味噌汁のことをおみお付けなんていいますが、漢字で書くと「御御御付」なんだそうな。ていねい語の三段重ねですね。

でも、この間読んでいたブログで、「裁縫 おさいくもの」というタイトルの古本のことを知りました。ものごとを慈しむ気持ちが何とも言えず、昭和の暖かさのようなものが感じられて、しばし幸せな気分になりました。

http://blog.livedoor.jp/hisako9618/archives/51645593.html

そういえば、昔は銀行預金の広告がやたらとありましたが、その文言には「お利息」とか「おトク」とか、なにやら居心地の悪い言葉が並んでいたことを思い出しました。しかし、今ではすっかり無くなりましたね。もはや、銀行預金で利殖をしようとすることが不可能になったのを実感させられます。