ペスト記念塔に思う

ヨーロッパを旅していて、よく目にするのが「ペスト記念塔」です。大抵、市の中心の広場などに建てられているんですが、結構グロテスクな格好のものも多くあります。
このペスト、今で言うパンデミックです。中世後期からヨーロッパ全体に蔓延して、一時は人口の三分の一が失われたとも言われています。
このペスト、もちろん病原体自身の毒性もあるんでしょうが、中世後期に経済の停滞にともなっての栄養状態の低下の影響の可能性もあるようです。また、十字軍以来のヨーロッパの海外進出がもたらした面もあるでしょう。今のグローバル化にも通じますね。でも、次第に当初の熱気は低下し、挫折感も感じられるところです。
問題は、そうしたいろいろな社会のゆがみが堆積した状態のところに襲ったのがペストだったわけですね。それだけに、社会に与えた影響は甚大だったとも思われますし、大きな変化点として後から振りかえられるゆえんなんでしょう。ペスト記念塔をみるにつけ、そんな感覚にとらわれます。

もちろん、今の我々の状況と単純に比較するつもりはありません。しかし、食一つ考えても、例えば食品添加物など、ゆがみが見られる面があることも否定できません。また、新型インフルエンザに対するマスク着用の異様な流行(ほんと、どんな空港でもマスクしているのは日本人だけですよ。感染者が着用するのならともかく、健康な人にはあまり効果がないとされているのに)を見るにつけ、何か、社会の底流に不安感でもあるのかないなと思ってしまいます。

そうはいっても、新型インフルエンザも、秋あたりからの再流行も予想されており、警戒は確かに必要です。問題は、いかに合理的な対処をするかですね。それが社会の進歩というものでしょうから。